コンビニに限らず、商売で最も大きな経費になるのが「人件費」です。
頭を悩ませている方も多いでしょう。
ここでは人件費を適切にして余計な経費をかけないようにするコツをお教えします。
結論から先に申しますと、私は月換算で5万円以上の人件費を削減しています。無理なく、どなたでも実現可能です。
これから書く事は、高日販店では「必要ない」「忙しくてそれどころじゃない」という事もあるかもしれませんが、考え方は将来的に必ず必要になってきます。覚えておくだけでもメリットですので、是非ご覧頂けたら嬉しいです。
人件費を適切にする為の思考法
人件費を減らそうとすると、真っ先にアルバイトに休ませて自分が代わりに入るオーナーが多いと思います。
間違いではないのですが、人件費の捉え方を勘違いしているとお店や経営に悪影響になりかねません。正しく理解して管理する事が大切です。
人件費は固定費
まず、人件費を「固定費」だと認識しましょう。固定費の意味は「売上の増減に関係なく一定にかかる経費」の事です。繁忙期と閑散期で人手を増やすお店も当然あるでしょう。人件費が増減するのは前提として、まず「ベース」となる月の人件費をきちんと把握しましょう。
あなたのお店は何人体制ですか?ベースの時給は?1日に人件費はいくらかかっていますか?
1カ月の人件費の計算
まず計算しましょう。
私が店長時代の実例です。当時の時給は600円代でしたので訂正してます。
思い出して安すぎてびっく( ゚Д゚)り( ゚Д゚)
シフト | 時給 | 実労働時間 | 人数 | 計 |
6:00~9:00 | ¥900 | 3時間 | 2人 | ¥5,400 |
9:00~17:00 | ¥900 | 7時間 | 2人 | ¥12,600 |
17:00~22:00 | ¥900 | 4時間45分 | 3人 | ¥12,825 |
22:00~3:00 | ¥1,125 | 4時間30分 | 1人 | ¥5,063 |
22:00~6:00 | ¥1,125 | 7時間 | 1人 | ¥7,875 |
¥43,763 |
休憩時間は引いてます。曜日によってシフト体制変えていたのですが、今はベース計算ですので無視します。
1日 | ¥43,763 |
1週間 | ¥306,338 |
1か月 | ¥1,312,875 |
1か月約131万円が自分がシフトに入らない場合の人件費となります。
このベースをまず把握して、売上に対する経費として適切な金額であるかどうかを考えます。
この場合はこれでも安定した収益が出ていたのと、掛け持ちをしていたので自分がシフトに入る事はしませんでした。
人件費を適正にする為の考え方
このベースを元にして、調整していくのですが、「固定費」であるという認識は忘れないでください。
固定費は徹底的に削減すべきです。が、「固定してかかる」から固定費なので、オーナーである自分が無理してシフトに入る事で削減をする事を真っ先に考えてはいけません。まずベースの金額を無理なく抑える方法がないか考えていきます。
「人件費の節約=給料を払わない」ではない
人件費を抑えたいがあまり、時給を一切上げず、全員が最低時給のまま経営を続けているオーナーもいます。こうでもしないと収益がままならないお店も多々あるので気持ちは分かります。が、それではスタッフのモチベーションも上がらず、離職率も上がります。時給はスタッフのモチベーション維持の大切な指標ですから、ここを徹底的に抑える前に無駄を徹底的になくす努力をしましょう。
人件費の無駄な時間を1分でも削減する
例えば、週5日で17時までのシフトに入っているスタッフが、毎日17:10に退勤しているとしましょう。1週間で50分の人件費が余計にかかります。これを5人がやっていたとしたら、1週間に250分、1カ月で1000分、約16時間強の人件費が加算されます。時給900円で換算すると約15000円です。たかが10分でも、積み重ねると大きな金額になります。ここに無駄な経費を払うくらいならその分手当や昇給に充てたほうがスタッフのモチベーションアップにも繋がります。出退勤の打刻はすみやかに。これを徹底するだけで経費を効率的に使えます。経費を使うのであれば、効果を最大限にする意識を持ちましょう。
業務の効率化
オペレーション業務も最大限効率化させるべきです。一つ一つの仕事をダラダラとしているくらいなら、さっさと終わらせてサボっているくらいの方が効率が良いと思っています。やらなくてもいい仕事はやらない。
業務の効率化も人件費を適正化させるために大変有効です。
夜勤を1人体制で運営しているお店も少なくないと思います。例えば、3時まで2人体制でシフトを組んでいるお店が、業務を効率化して2時以降を1人で運営できる体制を整えると、1週間で7時間分の人件費をカットする事が出来ます。30日で30時間。3万円強の人件費を削減できます。
また、曜日によって商品の納品がなかったりする事もあると思います。当社の場合は週に2回商品の納品がない日がありましたのでその曜日はスタッフの数を減らしていました。
低日販店では、時間によってアイドルタイムは1人体制でもいい時間帯もあるかもしれません。当社にもそういうお店はありますので、1時間でも2時間でも不要な箇所はシフトを削って一人体制で回しているお店もあります。
人件費を適切にする為にやるべき事
以上の考えをふまえて、無駄と考えれられる人件費の例と対処する方法を具体的にあげていきます。
無駄な人件費の例と対処法
その1 早出と残業
出退勤のタイムカードは、きちんとルールを作っておかないといけません。
私の管轄のお店では出退勤に関してのルールをきちんと決めています。
- 出勤は、シフトの入り時間になったら打刻しましょう
- 着替えは打刻の前に必ず済ませましょう
- 打刻前に仕事はしない。やむを得ず仕事をする場合は必ず打刻をしましょう
- 退勤はすみやかにおこなう事。5分を超えた場合は必ず理由を報告しましょう
こんな感じです。余計な時間外労働をさせない環境を整備しておく事で、スタッフもメリハリのある仕事がしやすくなりますし、ブラックな環境も出来にくくなります。
出退勤時のルールはきちんと整備して貼りだしておく事をおすすめします。
その2 雑務に充てる時間
仕事の中には、シフト時間内にはやる事が出来ない事も多々あると思います。両替、シフト作成、PC画面とにらめっこする作業等、シフト時間中にはなかなかやりにくい仕事もあります。
当社の場合、こういった仕事をシフト外の時間でやってもらっているスタッフもいるのですが、その場合のルールもきちんと決めています。
- 仕事にかかる時間を自己申告してもらう
- シフト後ではなくシフト前に早出してやってもらう
自己申告してもらう事で仕事に「いつまでに終わらせる」という意識を持ってもらっています。また、早出してやってもらう事でシフトに入る時間までに終わらせないといけないという意識が働き、効率が良くなります。
その3 サボっている時間
サボるという定義は人によって様々あると思います。
当社では1分1秒もサボるなとは一切言ってません。矛盾するかもしれませんが、仕事中に空き時間で世間話をする時間、楽しく過ごす時間も仕事を楽しくやってもらう上で大切であると考えています。
必要な仕事はきちんとこなしたうえで、空いた時間にスタッフ同士でコミュニケーションを取る事は許容しています。
以前に、高校生スタッフが新人に教えていた事がずっと心に残っています。
「店長がいない時はちゃんとやりましょう。店長がいる時はサボりましょう。」
と、店長の私の前で堂々と教えていました。
褒められた教え方ではありませんが、妙に安心したのを今でも覚えています。
いかにサボらせないかを考えるのは重要な事なのですが、24時間365日サボらない人間なんていません。
上手にサボれる環境を作れるかもオーナーの大切な仕事だと思います。
その4 休憩時間
休憩時間は法律で最低限取らなければいけない時間は決まっています。ですが、規定の時間よりも多く取らせてはいけないという法律はありません。スタッフとの話し合いは必須ですが、低日販店では休憩時間を延ばすというのもお店を安定させる為に必要だったりします。
私が店長として運営していたお店では、夕方18時~21時のシフトに入ってもらっていたスタッフに15分の休憩時間と取ってもらっていました。この時のスタッフは全員高校生でしたが、聞くと学校が終わってからそのままアルバイトに来る為、休憩があるとご飯を食べる時間が取れるから欲しいという事でしたのでそうしました。スタッフもお店もメリットになりますので、所定時間以外の休憩でもスタッフが望むならどんどん取ってもらうべきです。
その5 責任者が率先してルールを守る
どれだけ効率のいい労働環境を整備しても、手本となる責任者がそのルールを守っていないのは良くありません。責任者が模範となり、率先してルールを守りましょう。
私も、店舗で仕事をする時に心がけている事があります。
- 仕事をする時としない時間をはっきり分ける
- 時間外のスタッフに仕事の話はしない
この2つです。オーナーという立場上、ずっと仕事の事を考えてしまいますし、あらゆる事が気になってしまいます。ですが、スタッフは違います。時間外のスタッフに仕事の話を長々と話す事ほど嫌がられる事はありません。仕事中は厳しくもするし細かく指示も出しますが、オンオフはきちんと使い分けるべきです。
結論
人件費を適切にする為の考え方をいくつかあげましたが、一つ一つは細かい事です。が、経営というのはこういった小さい事の積み重ねが収益を安定させます。どんなお金持ちでも使うべきところと、節約すべきところは明確に分けています。
今は必要ないと思う方もいるでしょう。ですが、必要に迫られる時が必ず来るはずです。切羽詰まった時に慌てない為にも、今から出来る事は全てやっておく事をおすすめします。
ちなみに、私の店長時代の実例で、約131万円の試算だった人件費は、平均で125万まで減らしていました。
このういた6万円を、スタッフの昇給に充てるもよし、売上を上げる投資に回すもよし、オーナーの収入に充ててもいいでしょう。無駄な経費はかけない。経費をかけるなら誰かが喜ぶ事や、将来の為に充てるべきです。
経費は適切に、効果的に使いましょう。