コンビニ運営ノウハウ

コンビニオーナーが考える未来

コンビニオーナーとして10年以上運営をしていますが、今は特に時代の変化が激しいと最近感じています。

この変化に自分も対応していかなければ、取り残されてしまうと強く感じる事が増えるようになってきました。

先日、本部のある方と話をさせて頂く機会があったのですが、やはり本部側も強く感じているようです。

今コンビニ運営に携わる者が何を考えているのか、何をしていくべきなのか。以下4つに分けて書いていきます。参考になればうれしいです。

  1. 本部がやろうとしている事
  2. これからの加盟店の役割
  3. 加盟店も変わろうとしなければいけない
  4. 別事業の展開について

一つずつ、話せる範囲で書きます。

①本部がやろうとしている事

今までのやり方が通用しない

一昔前と違い、コンビニは乱立しています。ドラッグストアやスーパー等も形態を変えています。宅配サービスもどんどん便利になってきています。かつてはそこにコンビニがあればお客様がお金を落としてくれる時代でしたが、今は違います。

技術力の進化と、ITの力で、安価で質の良い商品がいつでもどこでも手に入るようになりました。今やどこで買おうと商品の品質は安定して高いです。また、宅配サービスの普及により家にいながら商品が買える世の中です。店舗型の商売をしている人は、これまでと変わらないやり方をしていたらあっという間に潰れてしまうでしょう。

つまり、競合が近所のお店だけではなくなっているという事です。Amazonや楽天等のネットショップも、自店の商圏の外のお店も、全て競合になり得る時代になっているのです。

今から通用するお店になる為に

そこで、コンビニ本部はポイントカードやアプリを使っての囲い込みをする戦略を拡大してきました。

これはコンビニが特別というワケではないですね。多くの企業やお店でもアプリに誘導する戦略を取り、アプリがない会社や個人経営店はSNSを使ってお客様に訴求しています。

お客様の囲い込み

最近では経済圏の確立を目指す戦略を取る企業が増えてきているように思います。「楽天経済圏」は良い例ですね。楽天で買い物をする人に他のサービス(銀行・クレカ・携帯電話・保険・証券など)を使ってもらう事で、お得になったりポイント還元率を上げる事で顧客を囲い込みます。どんどんお得になるので、楽天経済圏の中に入った人は楽天のサービスしか使いません。

コンビニもこれに似た戦略を取ってきています。これまではお店に来てくれた不特定多数のお客様に値引きやポイントアップといったキャンペーンを行っていましたが、今は、アプリ会員やポイントカード会員限定のキャンペーンが目立って多くなってきています。ポイントカード会員やアプリ利用者だけがお得になるような施策が目立ってきています。

セブンイレブンやローソンは銀行もあるので、クレカ等を使えばポイントがお得に貯まる施策もどんどんしている印象です。

独自優位性

囲い込みをするのと同時に、独自優位性も出していかなければいけません。「○○にしかない」商品を開発する、「○○に行かないと出来ない」サービスを作るといったことが出来れば優位性は高まります。

各チェーン共にアプリやポイントカードを使ってお客様を囲い込み、独自性の高い商品やサービスを利用して競合との差別化を図ろうとしています。

これが今コンビニ本部が考える戦略です。この戦略、地方で商売をする方にとっては大変重要です。

商圏人口が少ない地方では数打てば当たる戦法が通用しません。私が商売をしている地方では、1店舗当たりの商圏人口は1千人~2千人が多いのですが、地方ではこの商圏人口1千人全てを取るのではなく、200人に固定客になってもらう為にどうするかを考える事が大切になってきます。

②これからの加盟店の役割

そんな戦略をとる本部に対して、加盟店が出来る事はそんなに多くありません。

というか、やる必要はありません。本部が商品やアプリ開発、販促は全てやってますので、加盟店は、本部の

そんななかで加盟店がやる事は2つです。

  1. 全力で本部の施策にのっかる事
  2. 競合に奪われない強固な店舗体制を作る事

本部のお金は使い倒せ

例えば、アプリ会員限定会員に無料クーポンを配ったとします。クーポンをもらったお客様が近所のお店に足を運ぶとその商品が置いてません。これが2回、3回と続くとお客様は離れていきます。これでは本部がいくら販促をしてもお店のお客様は増えません。

本部がうつ販促費は加盟店からのチャージ料が原資です。それを利用しない手はありません。

本部を最大限有効活用する

本部が資金を使って販促を打つなら、それに乗っかって品揃えをする事が大切です。アプリやポイントカードの利用者向けに配られたクーポンの対象商品を豊富に品揃えしていれば、それを知ったお客様が足を運んでくれます。常連客になってくれるかもしれません。

もちろん、お店にとって不利益になる事はやるべきではありません。いくら本部が販促をした所でお客様の心に響かなければ売れません。売れない商品は置く必要はありません。

大切なのは、本部がとっている戦略を正しく理解し、使い倒す事です。

これ、なぜ出来ていないお店が多いかというと、「アプリとか良く分かんないよ」というオーナーの世代の壁というのもあるのでしょうが、本部のスーパーバイザーの指導力不足も大きいと思っています。戦略をきちんと理解していない、説明が不十分なスーパーバイザーがけっこう多いです。

例えば来週無料券が配られるとしましょう。「これ発注しておいてね」という言い方と、「こういう戦略だからこれは必要だよね」という言い方では伝わり方は全く違います。サラリーマンであるスーパーバイザーは、上司からのミッションを遂行する事が一番ですので、「これ発注しておいてね」という時間がかからない言い方をしがちなのでしょう。

どのチェーンでも同じ状況だと思います。出来ていないお店が多いのであれば、出来るお店が優位に立てる可能性は大いにあります。

強固な店舗体制を整える

2つめです。いざ本部の施策に乗っかって、お客様も大満足の品揃えのお店が出来たとしましょう。

しかし、コンビニはどこにもあります。近所の競合も同じ事をしています。

そうなった時、お客様に「選んでいただく」ためにお店は何をすれば良いか。

それは、「人の育成」です。

ファンがつくレベルでコミュニケーション能力が高いスタッフがたくさんいれば悩む事はありません。ですが、コミュニケーション能力も「才能」です。才能がある人はそうそういません。人手不足もあり、接客が苦手でもやむなく採用しているお店もあるでしょう。

人の育成でオーナーがやるべき事は、100点満点のスタッフを育て上げる事ではありません。

お店のスタッフ全員を80点にしましょう。

その方がお客様にとっても満足度は必ず上がります。

優秀な人が来るのをずっと待っている間にお店は潰れてしまいます。

それよりも、どんな人でも80点にする教育の仕組みを作り上げ、その仕組みを回していくほうがお店はずっと先まで安定します。

人が安定すればお店も安定します。オーナーや店長も売上を上げる事、お客様にもっと喜んでもらえる事に集中出来るはずです。

③加盟店も変わろうとしなければいけない

変わる事を恐れる加盟店は数多くいます。今までの積み重ねを捨てて全く新しい事をするというのは恐怖心がつきまとうのでしょう。ですが、変わらなければ取り残されて競合に奪われてしまいます。

最近ではスタッフ教育に動画を使う事が増えてきました。

私個人としては、10分の動画を見るより10分かかる活字を5分で読む方が早いだろうと思っているのですが、これから働く人達は違います。「動画を見る」という環境の中で生活してきたので、それが当たり前なのです。

業務連絡も、ノートや紙媒体を使っているお店もまだまだ多いでしょう。今の若い世代は「紙に書く」よりも「画面をタッチする」事に慣れています。業務進捗を紙でなくタブレットで管理するのは、時代の進化に合わせた効率のいいシステムです。

こういった事を受け入れない方も数多くいます。オーナーは変われても、コンビニは様々な世代が一緒に働いています。若い世代と年配の世代の仕事のやり方、考え方の違いで間に挟まれ頭を悩ませるオーナーも多いでしょう。こういう時、「これだから今の若い世代は」と嘆いたり、「まだ若いから分かっていない」と言うオーナーの元から、若い人達は離れていくでしょう。

仕組みもどんどん変わっていきます。大切なのは、変わるシステムに合わせて自分も変えていく事です。昔ながらのやり方を変えないお店では、お客様の支持はどんどん離れていく事になるでしょう。

④別事業の展開について

コンビニ加盟店オーナーが、別事業に挑戦しようとすると、「競業避止」という契約の縛りが出てきます。

例えばお弁当・パン・アイス・お惣菜等を売る仕事を始めようと思っても、これはコンビニの競合になる可能性がある為、本部は認めないという事になります。

この為、コンビニオーナーが新規事業をするとなると、コンビニの取り扱い商品とは無縁の業態を選ぶ事になってきます。

では

絶対出来ないのかというと、そうでもありません。

FC契約書の中で、違約金や契約解除といった法的措置が取られるのは、どちらかが裏切った時です。加盟店が契約違反の行動をして、本部が損失を被った場合、本部は法的措置に出るでしょう。

裏切った時というのはどういう時か。

本部が何を思っているのか。

聞ける機会がありました。

別事業を始めるに当たって、最も大切な事は、事業者としての責任を全うする事です。

事業者の責任とは

コンビニオーナーが別事業を始める時にやらなければいけない事。

それは「分けて考える事」です。

例えば、アイスを販売する事業を新しく始めたとしましょう。

最初は思った通りにいかず赤字が続きます。この赤字の補填を、コンビニ事業で出した収益の中から賄う。

これは本部にとっては「裏切り行為」になります。

これが加速してコンビニ事業の運営が立ち行かなくなった時、本部は「違約金」を請求する事になります。

別事業を始める時にやらなければいけない事は以下です。

  • 別事業をする時は、その事業にかかる予算をきちんと用意する。
  • 別事業の運営費を、コンビニ事業の収益で賄う事はしない
  • 別事業をやる事でコンビニ事業を疎かにしない

つまり、別事業をするなら、オーナーが抜けてもコンビニ事業が安定して回る環境を作った上で、「お財布はきちんと分けてね」という事です。

コンビニやってても儲からないから、コンビニはやった上で別の事を始めるというオーナーはけっこういます。

こういう方が成功する事はあまりないんですね。

一つの事業をきちんと出来ない人が、いくつやったって上手くはいきません。当たり前です。

別事業をしたいと思うなら、まずは今やっているコンビニ運営の地盤を固める事が大切です。

この考え方に至らないうちは、別事業を始めても失敗する可能性が高いので、別の事をやりたいのならコンビニ事業は辞める事をお勧めします。

まとめ

本部と加盟店という立場の違いから、普段は本心をさらすという事はあまりないでしょう。立場が上になればなるほど、責任が伴うので思っていても言えない事が増えてきます。

それでも、異動などで直属の担当から外れるタイミングでは、本心を話してくれる人は多いです。

本部も加盟店も、このままではいけないという不安はずっとあるはずです。

そんな時にすべきことは、「理解する事」と、「変化を恐れない事」です。

今回の記事が、ほんの少しでもコンビニ運営に携わる人の助けになれば幸いです。