経営

コンビニオーナーの失敗談

オーナーの考え方、働き方次第でお店・会社は変わります。

オーナーの姿勢や考え方で規模の小さいコンビニは大きく影響します。そしてそれが最悪の結果をもたらす事も少なくありません。オーナーの姿勢や考え方はお店の経営を成功に導いてくれるでしょうか?

はたまた部下の立場から見るオーナーの背中は、「私もこうなりたい」「真似したい」と思えるものでしょうか?

オーナーの姿勢や考え方で、結果的に失敗をする羽目になってしまった例を幾度と見てきました。

私が今までお会いしてきたコンビニオーナーの方々でそう感じた方の例を参考にお話しします。

失敗するオーナー

これからの記事は全て私からの目線になります。つまり「経営」するオーナー側からの視点です。オーナーでない方から見ると良くない表現もあると思いますが、今回はそこには焦点を当てていませんのでご了承ください。

例①

そのオーナーは、とにかく理想が高い方で、スタッフ全員に少しでも良い待遇をさせてあげたいと思っている方でした。個人経営でしたが、とにかく望む人全てを社会保険に入れてあげたい、規定の休憩時間も「要らない」という人がいれば取らなくてOK(これは労働基準法ではアウトです。本部からの指導もたびたび入っていましたが、改善は最後までしませんでした)など、人件費の細かい管理を全くしない人でした。(結局法人化まではいかず契約解除をされたので社会保険は未加入です。)

また、廃棄を出す事を極端に嫌う性格で、店内は常に品薄状態で、何も買わずにUターンして帰っていくお客様もけっこういました。そのため、売上の機会ロスも相当あるお店でした。

お分かりかと思いますが、典型的なうまくいかないオーナーの例です。

経営に対する理想が高く、財務管理が下手なオーナー

経営は、売上を上げる努力をする前に、まず経費を見直して徹底的に無駄をカットし、筋肉質な店舗体制を整える必要があります。売上を上げるというのは簡単な事ではありませんし、もし売上が良くても数年後には競合が隣に立っているかもしれません。

たくさんお給料上げたいと思うのは全く間違っていません。が、給料をたくさんあげたいのならば、昇給か手当で増やしてあげるべきです。「出勤時間より早く来て暇だからもう働こう」とか、「この後予定もないから引継ぎの人が来たらゆっくりこの仕事片づけよう」という事は、ダラダラと働くスタッフを出したり、評価されるべきスタッフが評価されない環境を作りだしてしまう可能性がある為、よほどの事情がない限り許可してはいけません。

時間内にきっちり仕事を終わらせて帰ろうとするスタッフに、「いつもさっさと帰って協調性がない」などと批判が起こるようになったらもう目も当てられません。評価されるべきは「勤務時間外も頑張って働く」人ではなく「時間内に期待される仕事を完了させる」人です。このような環境では優秀なスタッフは必ず去っていくという事を覚えておきましょう。

廃棄ロスは、売上を取るための必要経費でもあります。その必要経費を必要以上にカットする前に、固定費を削る努力をまずやらなければいけません。

Aさんはそれでも売上には多少恵まれていたので数年はやっていけましたが、自分思い描いた理想通りにいかない事でモチベーションが維持できず、満期を待つことなく中途解約をしていなくなりました。

この、残業や早出をダラダラと許す環境をそのままにしておくオーナーは今でもけっこういます。こういうお店は商圏事情が変わったり、コロナ等で情勢が突然落ち込んだりすると突然経費カットをし始めます。が、これまでの環境に慣れきったスタッフにはストレスとなるので、聞いてくれないスタッフも必ず出てきます。ただでさえ不安な情勢の中、店舗体制もイチから作り直さなければいけないというのは相当な労力になります。

情勢が悪化してもすぐに対応できる準備はしつつ、収益は最大限とっていく姿勢を常に持ち、余力で従業員への還元や事業拡大に繋げられるよう、常に筋肉質な店舗体制を整えておきましょう。

例②

このオーナーは、少し優しすぎるオーナーで、仕事を頼む事が苦手な人でした。

オーナーがスタッフの何倍も動いてなんでもやってしまう為、一緒にシフトに入るスタッフはレジでの接客以外の仕事はほぼありません。

当然、スタッフのスキルは上がりません。オーナーがいない時間はお店のレベルがぐんと下がります。オーナーは休みでもお客様対応でお店に行くことが徐々に増え、休めない事も多い状況が慢性的に続き、身体を壊してしまします。このオーナーはコンビニが大好きで楽しそうに経営していました。が、身体は正直です。昼夜問わず来るお店からの連絡で生活も不摂生になり、ある時脳出血を起こしお店で倒れてしまいました。幸い手術は成功し、退院はしましたが、手に障害が残り、それがきっかけで辞める決断をしていきました。

優しすぎて人に任せられないオーナー

当たり前ですが、身体を壊すまで働いてはいけません。オーナーは会社員ではないので、「労働基準法」は適用されません。経営者なのだから、時に無理もするでしょう。しかし、「無理して身体を壊して経営が出来なくなった」というのは「経営に失敗した」という事です。

「自分が頑張ればいい」というのは「自分一人が頑張ればいい」ということではなく、「自分が頑張る事で周囲を引っ張っていく」ということです。経営者なのだから、誰よりも踏ん張って頑張るのは当然ですが、その姿を見たスタッフのモチベーションに繋がっていないのであれば無駄な努力になってしまいます。

「何事もオーナーは指導だけで自分では極力やらないようにしている」

「何事もオーナー自ら率先してやる」

など、考え方には色々あるでしょう。どんな考え方でもいいのですが、その考え方の末に、「スタッフのモチベーションアップ」がないのであれば、未来は明るくなりません。

スタッフがオーナーの背中を見て、「ついていこう」「自分たちも協力しよう、貢献しよう」と思ってくれるように導いていく事が大切です。

例③

そのオーナーは、税務管理は得意でした。どこをどういじれば収益が出るかをかなり勉強していて、日販の割に高い収益を出していました。

家族を支え、子供を大学に行かせて、自分も必要以上に頑張らなくても十分な収入が入ってきていました。(本部の人にこそっと聞いたので正確な金額は知りませんが、直近の50代男性の平均年収統計データの1.5倍程だったと記憶しています。)

それもあってか、オーナー自身は土日祝日はいっさいお店に来る事はありませんでした。お店でトラブルがあってもオーナーは「休みだから」という理由で電話にも出ず、本部のスーパーバイザーが対応するなどでなんとかしていました。スタッフの不満は溜まっていきます。祝日休みたいスタッフもオーナーが代わりに出てくれる事は一切なく、スタッフは少なくなっていき、またモチベーションも維持出来ない為お店の雰囲気とお客様の支持も下がってしまいました。

ある時そのお店から5キロ以上離れた場所に同じチェーンのお店が出店しました。オーナーは聞いてはいましたが、かなり離れた場所で商圏も重ならないだろうとあまり気にしていなかったのですが、新しいお店が開いてすぐ、日販が10%以上落ち、それが一時的ではなくずっと続いてしまいます。

新しくオープンしたお店には、オーナーのお店の近所のお客様も相当数いました。同じ看板で、特徴も差もないお店なのに、わざわざ遠いお店まで足を運ぶお客様が多数いたのです。

財務の計算しか出来ないオーナー

経営には、「ヒト・モノ・カネ」を総合的に見るスキルが試されます。

コンビニFCという特性上、モノの管理は本部がほとんどやってくれる為、FC加盟店に求められるのは、「ヒト・カネ」の管理です。

どちらかだけでは経営は長続きしません。バランス良く上手に考えられる人でないといずれ状況は悪化していきます。財務は数字なので計算すれば結果が出ます。「1+1=2」という式がそのまま当てはまりやすいのですが、人はそうはいきません「1+1」が100にも、マイナスにもなり得るというのを強く意識しておかなければいけません。

FC本部に求められるものは、

「等しく誰でも出来る仕組みと競合優位性」

であり、FC加盟店に求められるものは、

「その商圏における人材の確保と指導教育」

です。仕組みを使ってその商圏で人材を確保し、商売をするのが原則です。

その努力を怠ると収益には繋がりません。長続きしません。

そのオーナーはその後姿勢を正し、スタッフときちんと向き合うようになって今では売上も少し改善し、まだまだ現役で頑張られています。そのオーナーの近所のお客様もあまり来なくなりました。

これ、実は出店した新店というのが私のお店だったんです。影響ないと思っていたお店に影響してしまい、当時はかなり恨まれたと思います。私もきまずい気持ちもありましたが、営業をしていくにつれてそのオーナーお店の近所のお客様と世間話になる事も多く、それがネガティブな内容である事が多かった為、「自業自得」だと、当時の私はそう自分で腑に落ちました。

とはいえ、私のお店がきっかけなのは変わりないので、オーナーの姿勢が代わり改善した事を素直に嬉しく思います。

まとめ

私の周りのほんの一部ですが、これを見て下さった方が同じ失敗を繰り返さないために少しでもお役に立てれば幸いです。他のオーナー同様、私も失敗で辛い状況に陥った事が何度もあります。オーナーをしていると、思いもよらない事からいきなり窮地に立たされる思いになる事も少なくありません。

コンビニオーナーだって経営者のはしくれであり、小さな狭い世界でもやっている事は他の経営者と同じです。やる事は変わりません。後ろ向きになっている方の背中を少しでも押すお手伝いが出来て、その方の未来が少しずつ明るくなるのであれば、こんなにうれしい事はありません。