コンビニを複数店経営して10年を過ぎた私がこれまでの経験を「経営者」の視点から発信していこうと思います
本部の支援もありながらお店を移転したり、潰したり、オープンさせたりと、小さい規模ながら様々な経験をしてきています。
- 「実際どうなの?」
- 「儲からないんでしょ?」
- 「搾取されてんでしょ?」
という疑問に少しでも答えることが出来れば幸いです。
まず、最も聞かれる事が多い、「コンビニって儲かるの?」という疑問ですが、この答えは、
「人による」です。こんな答え求めてないと思います。
ですが、私が今まで見てきた感じですと、本当に人によって儲かっているいないがはっきり分かれます。
また、人によって基準もまちまちです。
家族がそれなりに幸せに暮らしていければ問題なし!のオーナーもいます。
とにかく稼いで贅沢するんだ!と頑張り続けるオーナーもいます。
お金の価値観は人それぞれです。
年収300万円でも幸せだと感じる人もいるでしょう。
年収2000万円でも足りないという人もいるかもしれません。
では年収が億を超えたら幸せなのでしょうか。
これを読んでくださっている人は私と価値観が違うかもしれませんので、先程の答えは「人による」となってしまうのです。
これだけではお話になりませんので、コンビニの状況や、収益構造について一つずつ解説します。
ちなみに、私は地方在住ですのでそんなにガツガツしていません。贅沢もいいなとは思いますが、高級外車乗り回したいとか、全身ハイブランドで身を包みたいとかはそこまで思いません。
お金持ちって?
お金持ちの定義も人それぞれですので、ここではいわゆる「富裕層」と呼ばれる資産が1億円以上ある人の事をお金持ちとします。
税金等の細かい話はややこしくなるので省きます。
「1億稼いだらお金持ち」という基準で見てみます。
- 収益構造
- コンビニ加盟店のおかれている状況
- ではなぜやっているのか
まずは数字を見てイメージしてみましょう。
コンビニの収益構造
内部の数字出すと怒られるので公式に発表されている数字で計算してみます。
2021年度3月~8月のセブンイレブンの平均日販が約65万円らしいのでこれを使います。
地方で経営する私のところは平均日販はもっと低いです…
1店舗経営オーナーデビュー
65万円(日販)×365日(1年)=1億3725万円
営業利益率を3.1%(平均ですが、こんなもんです)として計算すると、
年間営業利益→735万750円
となります。営業利益です。税引き前で約735万です。個人事業主だと所得税が23%引かれるので、税引後でざっと565万くらいでしょうか。
- 日販65万→735万 税引後の収入565万円
- 日販50万→565万 税引後の収入452万円
- 日販40万→452万 税引後の収入361万円
です。これでは1生かけても1億貯まる気がしません。
じゃあ店舗数増やせばいいんだ!経営者なんだから!
ちなみに、私の運営する各店の直近3カ月の営業利益率は大体2.8%~3.4%でした。
※参考
個人事業主の課税率と法人の課税率一覧です。
個人事業主の所得税 | |
課税される所得金額 | 税率 |
195万円以下 | 5% |
195万円を超え330万円以下 | 10% |
330万円を超え695万円以下 | 20% |
695万円を超え900万円以下 | 23% |
900万円を超え1,800万円以下 | 33% |
1,800万円を超え4000万円以下 | 40% |
4000万円超 | 45% |
法人税の税率 | |
年800万円以下の部分 | 15% |
年800万円超の部分 | 23.20% |
国税庁HPより
複数店経営オーナーへ
ここで加盟店オーナーとして一つ階段を上ります。夢の多店舗経営です。オーナーとして経営してるんだから、大きな目標として掲げるのはとても夢がありますね。
さぁ、念願叶って2店舗目がオープンしました。一人では出来ないので、店長を一人雇います。月給30万、年360万払う事で雇うことができました。
日販が母店(最初にオープンさせたお店)と同じであれば、単純に2店舗目の収益は雇った店長の給与を引いて375万です。1110万円に増えました。課税率は33%に上がり、年間で743万円が懐に入ってきます。
※本当にざっくりした計算です。
ついに法人設立!社長になりました
これを次々に展開してみます。単純計算です。
34店舗を超えたところで、
年間営業利益 | 1億3110万円 |
税引後利益 | 1億134万円 |
となり、はれて1年で1億円以上を稼ぐ立派な会社の社長となりました。人生の成功者。勝ち組です。
店舗数だけを見ればもっと多くの店舗を運営しているオーナーもいらっしゃいます。
ここまで来ると普通のFC契約ではなくメガフランチャイジー契約です。
通常の契約ではないので、内容も変更になっているはずです。(契約内容教えてもらえませんでした…)
現実的には至難の業
ここまで見てもらっておいてなんですが、これは全く現実的な数字ではありません。
なのでメガフランチャイジー契約の中身のロイヤリティーなんてどうでもいいんです。
(というか知りません。すいません)
そして、メガフランチャイジー契約までいくと、日販は65万円もありません。私が知っている範囲ですが、多店舗展開をするオーナーは、高日販店と同時に、低日販店も抱えています。
ドミナント戦略の実態
ドミナント戦略(ドミナントせんりゃく、dominant strategy)とはチェーンストアが地域を絞って集中的に出店する経営戦略。ある地域内における市場占有率を向上させて独占状況を目指す経営手法。
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
要は、競合の出店を防ぐ為の策です。狭いエリアに集中してお店を建てる為、当然1店舗毎の売上は下がります。低日販店だと分かっていても自チェーンの看板を守るために出店します。
ドミナント戦略で建つお店は、利益が見込めない為、新規オーナーにはとても経営出来ません。
では誰がやるのかというと、多店舗展開をしているオーナーに白羽の矢が立つのです。
○○にお店出すんですけどやってもらえないですか?
立地的に厳しいよね?売上見込めないと思うんですけど…
そうなんです…ですので、高日販の○○店も譲ります。
ほう。○○店か。それならやりましょう。
なんて交渉が行われていたりします。
多店舗展開をしているオーナーはリスクを抑えられるので、個人ではとても経営出来ない低日販のお店も抱えている事が多いです。そしてそのリスクを背負っている見返りとして、契約内容を有利にしてもらっていたりします。
当社での実際の利益
分かりやすいかどうかはわかりませんが、実際どれくらいかを私の運営する一部の店舗を抜粋してみますと、
私が運営するお店から、低日販には入らない程度のお店3店舗(単店経営するにはなんとか食べていけるレベル)での年間営業利益は、約450万円程です。社長である私への役員報酬は含まれません。ここから税引後の金額が会社に利益として残ります。私自身の収入とは別です。
体感ですが、「意外と利益出るんだなぁ」という感じです。
これは多店舗展開のメリットといえるでしょう。
ですが、冒頭に述べた、「億」というお金には到底届くものではありません。
コンビニ加盟店のおかれている現状
まず、簡単に26店舗といってますが、ここまで拡大させる事は本当に難しいと思います。
実際に多店舗展開をしているオーナーがどれ位いるかというと、私が聞いた事のある中で、10店舗以上を持つオーナーは各都道府県に点在している印象です。私が住む地域でも、10店舗以上を持つオーナーは3人以上います。しかし20店舗以上となると本当に少ないです。そこまで拡大しているオーナーを私は片手で収まるくらいしか知りません。
コンビニ数多すぎ問題
前述した「ドミナント戦略」ですが、これをもう少し踏み込んでみてみます。コンビニやっていると、近くに同じ看板のお店がオープンする事があります。近所に立ってるんですから、必ず日販は下がります。巻き込まれたオーナーは不憫ですよね。「なんでこんな事するんだ」「仲間じゃないのか!」「同じ人間のする事とは思えない!」
なんて思いますが、これも先程述べた通り、本部が生き残る為の戦略で、契約内容にエリアについて明確な取り決めがない以上、オーナーはそれに従うしかないのです。
私の印象ですが、コンビニはもう止まれないところまでいってしまっている気がします。
「あっちにもこっちにも建ってる」と思う位コンビニは乱立しています。多少減ってもそこまで不便にはならないでしょう。
ですが、特に大手3社は、「出店ペースを落とせば競合に出店される」と戦々恐々なのです。
やらなければやられるのであれば、やるしかない!とそんな感じですね。
コンビニの商圏
コンビニでの売上規模というのは、そのコンビニが持つ商圏(そのエリアで生活している人や仕事や遊びで通う人)がどれほど大きいかで決まります。「立地が全て」と言われるのはこれが理由です。自分が住む町にコンビニが1件しかなかったらと想像するとわかるでしょう。大儲けです。しかしこれは成立しません。競合と呼ばれる同業他社がいるからですね。セブンイレブン、ファミリーマート、ローソンをはじめ、ニューデイズ、ミニストップ、セイコーマート等、思いつくだけでもけっこうあります。これらの競合チェーンが高日販店の情報をかぎつけると、その店の近くに建てようとします。他所に奪われるくらいなら、自分のところで建てたほうがいいですよね。単店の日販は減りますが、収益は減りません。むしろ上がります。これを繰り返し繰り返しやってきたのが今の日本のコンビニ事情です。現在ではコンビニの商圏は500m、徒歩にして10分で行ける範囲と言われています。1チェーンでですよ?1つのチェーンで500m置きに建つのに、そこには他チェーンがシェアを奪いに次々と戦を挑んできます。人口の多い都会なら分かりますが、これが日本全国で起きているんです。
オーナーは戦々恐々でしょう。高日販のお店を手に入れても、数か月後には隣にコンビニ建ってるかもしれないんですから。
本部もある程度考慮はするが…
このドミナント戦略、一応ルールというか、仁義は通すのが普通です。叩かれまくったので今は特に慎重になっている印象です。建てる予定の近くに店を構えるオーナーに最初に相談し、そのオーナーに新店をあけてもらう。それがどうしても無理なら別のオーナーに開けてもらうが、収益が下がらないようになんらかの支援をしている事が多いです。しかし!コンビニ本部は日本中に支部があります。県境だと管理運営している人間が違います。規模も大きいと情報伝達がされていない事も多いです。
私の運営するお店も、そのお店から2kmほどいった先である時突然同じ看板の店が建設を始めました。本部に聞いても「知らなかった」の一言。そこは県境で、隣の支部同士で情報伝達が不足していたのです。もちろん私は心穏やかではいられません。と、担当のスーパーバイザーを見るともっと怒っていました。責任者と一緒に隣の支部に乗り込んでくれました。結果的に、「大変申し訳ございません」で終了です。契約は締結しているので、もうどうにもできません。
この時は運よく私の運営するお店の日販にはそこまで影響せず、系列のお店の売上を上げていけるような支援もしてくれたので納得はしましたが、このお店しか持っていないオーナーだったら大変なことになっていたでしょう。でもこれは契約の想定範囲内で起こりうることです。
運営は楽ではない
コンビニは原則24時間営業が基本です。常に1人はスタッフを置いておかなければいけません。24時間を常に2人体制で回すお店があったとして、1日8時間働ける人だけで回しても最低6人は必要です。
私が現在営業しているお店でも、少ない人員のお店でも8人(足りてません…)、多いところでは15人以上のスタッフが在籍しているお店もあります。運営するお店が多くなればなる程、抱える人員数も増えます。また、24時間365日の営業を成立させなければならないというのが、やってみるとかなりの負荷になります。自分が寝ている時間にもお店は営業し続けているワケですからね。今は大手であればどのチェーンの本部のサポートも充実しているので、寝る時間もないというのは「経営力がない」だけなのですが、1店舗当たりの負荷が高く、収益が見合っていないお店も多々あります。そういうお店を20店を超えて増やし、維持し続けるのは現実的には至難の業だと思います。
コンビニ飽和時代と言われる現代の状況の中で、単店で安定した利益を出す事も難しければ、数十店舗もの店舗を同時に経営するって、本当に難しいんです。
正直、コンビニ事業で1億どころか、数千万稼ぐのだって厳しいかもしれません。
それなりにお店が運営出来るレベルで、平均的な会社員と同じか、少しだけ余裕を持った生活が出来るくらいのもんだと思います。
そして、売上が下がれば収入は下がります。働いていれば収入が上がり続ける保証は全くありません。
そんなもんです。コンビニなんて。
では、なぜやるのか
前述した情報ははネットで調べて出てくる情報を見れば、おおよそ想像がつくでしょう。世間で言われているネガティブな情報もあながち間違いではありません。
ですが、日本全国にコンビニオーナーはたくさんいらっしゃいます。
公正取引委員会が令和2年9月に発表した報告書では、同時期にコンビニは全国に57,524件あるそうです。複数店を経営するオーナーや、メガフランチャイジーと呼ばれる、規模の大きいところで100店舗近くを運営するところもあるため、実際のオーナー数はもっと減りますが、相当な数のオーナーが現在も頑張って経営しているという事ですね。私もその一人です。
これほどネガティブな情報がまん延しているのに、みんな辞めないんです。なんだかんだ続けているんです。
- 「うちが潰れたら近所の足の悪いおばあちゃんはどうすればいいんだ」
- 「災害時はこのお店が誰かを救うんだ」
- 「うちはけっこう儲かってるからな~」
いろんなオーナーがいるでしょう。思いや志はオーナーの数だけ存在します。
志は人それぞれです。私がとやかく言う事ではありません。
オーナーのメリット
メリットは3つです。
①責任と覚悟を持てる事で見える事がある
オーナーは経営者です。経営判断の失敗は全て自分で責任を取らなければいけません。
そこが会社員との大きな違いです。会社員は「責任を取って辞めます」といえば給料が0になるだけでおしまいです。経営者は、損失は自分で被らなければいけません。
この責任の重さが、オーナーを育てるのです。覚悟の違いです。
昨今では覚悟のないオーナーも非常に多く、「会社員やってればいいのに」と思う事も多々あります。
②仕組みを動かす事で、自分がいなくても収入を得られる
自分がお店に立っていなくても、お店が営業し続ける限り売上はあるので利益が生み出されます。
「不労所得」です。きちんとお店を運営して、仕組みを整えれば可能です。
といっても遊んで暮らせる程の収入はないでしょう。状況は厳しいです。全く体をいれずに安定した収益を出すのは大変難しいです。
ですが、多店舗展開も出来ます。ある程度人に任せて他の事業を持ったっていいんです。
これはオーナーにしか出来ない事だと思います。
③本部のノウハウを使える
本部には、これまで数多くの店舗とオーナーが運営してきた実績と培ったノウハウが集積されています。
「経営の教科書」のようなものが本部にあるのです。
もちろん自分で経営について学び続ける事は必須ですが、迷った時、分からない時に本部にはそれを解決する為のノウハウがあるので、経営の初心者にとっても大変優しいのです。
困ったらどんどん聞きましょう。解決策は本部に必ずあります。もしなくても一緒に考えてくれます。
メリットをきちんと意識すれば先は明るい
このメリットを強く意識しましょう。これに限った話ではありませんが、努力は必須です。
悪いイメージも多いコンビニオーナーですが、上手にやっているオーナーも多いです。
私自身も、「やるんじゃなかった」とは思った事はありません。メリットをきちんと享受して、前に進んでいるからです。
まとめ
- コンビニ経営だけでお金持ちになるのは大変厳しい
- 多店舗展開を進めれば可能だが、コンビニが置かれている状況はオーナーにとっては厳しい
- それでもコンビニオーナーは様々な志から経営を続けている。儲かっているオーナーもいる
- オーナーのメリットをきちんと意識しよう